a-dollのブログ

忘れたくない日々のあれこれの記録

歌舞伎を観る

昨日の雷雨で涼しくなって助かる。
夫と松竹座へ歌舞伎昼の部を観に行く。『関西・歌舞伎を愛する会、七月大歌舞伎』千穐楽だった。
出し物は『伽羅先代萩(めいぼくせんだいはぎ)』他。
我が子(千松)を犠牲にし、幼君鶴千代君を守る乳母、政岡を藤十郎
仁左衛門は仁木弾正とその妹八汐の2役。
仙台藩のお家騒動を主題にした有名な芝居で、見せ場が幾つも有って面白い。
「腹が減ってもひもじゅうない〜」の千松。その千松が母の教え通り毒入りまんじゅうを食べて苦しみ、あげく八汐に殺される。八汐の憎々しい態度。
皆が去った後、政岡が我が子の死体にすがって泣きながら言う台詞「でかしゃった〜でかしゃった〜でかしゃったわいな〜」
藤十郎は中々の熱演で、隣の座席のおばちゃんは「ぐすんぐすん」とハンカチを手に本当に泣いていた。
歌舞伎はミュージカルと同じだから、義太夫に合わせてこの台詞を言う訳である。
子役は健気に延々と続く、大げさな愁嘆場を我慢して死んでいたのである。
次の『床下』の場面では仁木弾正は鼠に化けている。辛うじて逃げた鼠は花道のスッポン(せりあがり)から巻物を銜えてどろどろっと上がって来る。照明は手燭だから、ゆらゆら揺れて不気味な大きな影が揚げ幕に写り、恐ろしげな雰囲気が出ている。
この仁左衛門の姿を観るだけでも、今日の観劇の値打ちは充分だ。
オペラグラスで大きく観ると、面を切った役者の目は一瞬充血して迫力が有る。集中して目に力を入れた揚げ句に血走って来るのか。
伝統と訓練の賜物、流石だなあと唸らしてくれる役者の演技。
歌舞伎ってやっぱり面白い。