a-dollのブログ

忘れたくない日々のあれこれの記録

犬の思い出

H子姉ちゃんがコメントに書いてくれた様に、犬には悲しい思い出がある。
今から62年前になる。私は小学校3年生、太平洋戦争は末期に近づいていた。この頃は食料がどこの家でも不足していた。お手伝いさんも戦時中は和歌山の実家に帰って行った様に思う。家族の食料だけで精一杯なのである。
『衣食足って礼節を知る』ってことわざが有るけれど、ひもじい思いをすると、仙人でもない限り人間は心のゆとりを無くしてしまう。戦争が無ければ、良き隣人たちなのに、長く食料が不足すると疑い深い卑しい気持ちが生まれ始める。
「Mさんとこは、この非常時に犬を飼っている。配給もろくに無いのに、犬に食べさす食べものが有るらしいよ。どこで調達したはんねんやろ?」と言う噂が流れ出した。
個人の自由だ、と言っていられない時代だった。『隣組』という組織ががっちり出来ていて、近所と上手く付き合わなければならないと言う空気が有った。
辛い事だったが、父の判断で犬を処分することになった。 家族皆が自分の食べる分を削っても犬に食べさせてやりたいと思っていたのに。
現代の様に保健所に引き取ってもらうシステムなんか無い。自分の手で何とかしなくてはならない。
当時、父の弟から、大学の研究室の薬品を戦災から逃れるために我が家で預かっていたが、それを使った。
家族全員が見守る中で犬は死んで行った。
犬が大好きな兄がむしろに包んだ犬を、自転車で運んで川に流しに行った事までは覚えている。
兄の気持ちはどんなだっただろうと思う。忘れられない、忘れてはならない悲しい辛い思い出である。
辛いお話はこれだけ、次からは可愛いワンちゃんのお話です。