今日は機嫌が悪く眉間に皺を寄せてブスッとしていた。
新しいパジャマに着換えて、よく似合うよと褒めて貰っているのにである。食事も食べなかったそうで最悪だ。
土、日は車椅子に乗れないかも知れないから、頑張って今日車椅子に座ろう、といやいや座らせてもらった。
ふと「そうだ散髪屋さんに行こうか」と言ったら「うん」と機嫌が良くなった。
長い時間座れるようになったので、もう大丈夫だろうと、エレベーターで１階に下りて散髪屋さんを覗いてみた。
１０分程待って、２ヶ月半ぶりに散髪をして貰う。
散髪が好きな夫は終わるまで３０分程シャンと座っていた。
散髪屋さんは女性で、腕も良いけれど口も上手く、男前やわ、とか昔は女の人を泣かしはったんでっしゃろ、とか若く見えはるわ、とかお世辞を言いながら手を動かしている。
夫は悪い気がしないのだろう、気持ち良さそうだった。
長年夫婦をやっているけれど、夫が散髪をして貰っている所を見学した事は無い。
汚れもすっかり取れて、鼻毛も切って、さっぱりした顔で病室に戻る。
看護士さん達に「わあ、Aさん、若こなったわ」と言ってもらっていた。
