a-dollのブログ

忘れたくない日々のあれこれの記録

女中の話の本

2冊本を読んだが、どちらも偶然戦前の女中の話だった。

『イギリスのある女中の生涯』
これは小説ではなく、実在の女性の話を、テープに録って書いた1人の女性の生涯の記録である。
1900年頃、イングランドの南部の貧しい農村で産まれたウイニフレッドが、女中奉公する話。
大英帝国の豊かさの陰に、国民の生活は金持ちと貧乏人の差は凄い。
僅かな賃金で、凄まじいまでにこき使われている。夢と志を持ちつつも、生涯貧しさから抜け出せなかったウイニフレッド。
何人も使用人を酷使し搾取している屋敷の主人。人間扱いされていない使用人たち。
美しい上流家庭の映画でいつもため息を付いて観ているが、見えない場面で泣いている使用人が居ることを思い知らされる。

イギリスのある女中の生涯

イギリスのある女中の生涯

『小さいおうち』中島京子著。本年度の直木賞受賞作品。
昭和初期に13才で田舎から上京して女中奉公をする主人公、タキの回想録の形を摂った小説である。
フィクションだし、時代は20数年の差はあるが、ずっと人間的で家族的だ。名前もタキちゃんと呼ばれている。
因みに、私の子供の頃は、おきよどんとか“どん“をつけていたし、夫の家では女中の呼び名は代々“やえさ“と決まっていた。ひどい!人権を無視している。

話は小説に戻って、奉公先は山の手のサラリーマン家庭で、家族は若い夫婦と子供一人。
坊ちゃまはちょうど私の夫と同じ年。
幾つになっても、時代が変化しても、変わらずお嬢さんのままの奥さま。センスが良くて美しい奥さまに憧れと尊敬を抱き、赤い三角屋根の家で生活出来るのを生涯喜びとして生きて来た。
奥さまの秘密を死ぬまで持って行くタキ。
最終章では驚く展開になって最後までおもしろく読んだ。
小さいおうち [ 中島京子 ]
写真は庭仕事をしている私を屋上から眺めているクルミ。