お正月2日目
朝、初風呂に入る。
幼児の頃は(もう80年近く前)大阪市内に住んでいたから家にお風呂は無かった。
その代わり近所に銭湯が沢山あった。
お正月の2日の朝「こだま湯が沸いた!沸いた!」と笹を担いだお風呂屋さんの丁稚が大声で叫んで走って行った。
それを聞いて人々は初湯に入りに行ったのだった。
家には妹が生まれていて私もまだ赤ちゃんに毛が生えたぐらいで手がかかる。
母が子供を順番に洗ってお湯につけて温めで1丁出来上がり!って具合に脱衣所へ連れて行く。
そこにはおなごっさん(お手伝いさん)が待ち構えていてタオルで拭い衣服を着せて銭湯の前で待っているお店のぼんさんに渡す。
彼はそのほかほか赤子を抱いて帰り、家で待っている別のおなっごっさんに渡す。
母は次々子供を洗って湯に浸かり、仕上げて渡す作業を続ける。
私のすぐ上のH子ねえちゃんまでは洗ってもらっていたのではないか?
とにかく物心ついた頃にその話を聞いて「お母ちゃんのぼせはったやろ・・・」と思ったものだ。
もう少し大きく成長してからは、自分でお風呂を使って(新しい家にはお風呂もあった)出てくると、髪の毛を火鉢の火で温めたコテでカールをさせ、リボンをつけたりしてから着物を着せてもらった。
着物は年々背が高くなるので、暮れの間に母が裾の縫い上げと肩あげを縫い直して身にあった寸法の着物を着せてくれた。
女の子が沢山いるとお正月の母は大変だったのだ。
着物を着ると足元は「こっぽり」を履く。
今は京都の舞妓さんが履いているあのこっぽり。
窪んだところに鈴が付いていて、歩くと「ちりんちりん」と音がする。
ちりんちりん、こっぽこっぽ・・・とお正月歩き。
羽子板で羽根を付いたりして、羽根が落ちたら拾う時は袂を片手で押さへ地面について汚れない様に・・・子供ながらに優雅やなあなんて思っていた。
暖かいお湯に浸かりながら、子供の頃のお正月の初風呂を思った。
1歳のお正月。女学生のC子姉とお店の前で。私のことだから多分まだ歩けなかったと思う。
ちょうど80年前に撮った写真。