柚子の花
同窓会コーラスの練習が終わってから、後輩の車でAさんのタワーマンションに行った。
次の合唱祭に後輩が着るステージドレスを借りようと思ったのだ。
Aさんのマンションは上本町6丁目(上六)の近くにある美しいマンションだ。
学校までも歩いて行ける場所なのに「歩くのがおぼつかない」という理由で休んでいる。
今日マンションのロビーまでドレスを持って降りて来てくれた。
杖をついているけれど元気そうだ。
「もうどこへも行けへんからノイローゼになりそうやねん」
いくら美しいマンションでもお部屋だけに居たら気は晴れないだろう。
身体も弱る一方だ。
「タクシー呼んでコーラスの練習に出ておいでよ。
合唱祭は出なくても良いから、練習に出て来たら気分が晴れるよ」と誘ったら、
「そやけどお手洗いが近いねんわ」
「途中でトイレに行ったらええやんか、誰も咎めへんよ」
なんでこうごじゃごじゃマイナーなことばかり話す子なんだ!
甘ったれるな!!
って言いたかったけど、
「じゃドレスお借りするわね。ありがとう
再来週コーラスにおいでね、待ってるから」と言って美しいタワーマンションを後にした。
雨が降り出した。
雨なのに難波は人で溢れていた。
外国人観光客も大勢いた。
後輩の車に乗って難波で降ろしてもらう。