荒れ放題の裏庭に金柑の花が咲いていた。
良い香りがしている。
来年春に金色の実がなるだろう。
電話が鳴った。
「a-dollちゃん!わたし!」
「あっ みっちゃん!」
顔は見えなくても、幼い日から知っている懐かしい顔が浮かんでくる。
彼女は時々電話をくれる。
小学校の5、6年生で同じクラスになって、一緒に合唱部に入ったり、同じ班になることも多く仲良しだった。
もう殆どのクラスメイトが亡くなったり消息不明になったが、彼女とはまだ繋がっている。
今日はまたクラスメイトの悲しい情報を教えてくれたのだが、
それから、あのこと、このこと、懐かしく思い出して喋る。
「寂しいけど、しょうないやん。元気でいてよね〜」で電話は終わる。
小学校の周りに川が流れていて、小さな橋がかかっていた。
その辺りは私たちの放課後の遊び場だった。
夕暮れ近くまで夢中で遊んで、薄暗くなってから帰宅して叱られたことや、一緒に新聞紙をちぎってノリを混ぜて立体地図を作ったこと、一緒に学芸会で劇をしたり、コーラスを歌ったこと。
電話の向こうにはその頃のいつも笑顔のみっちゃんが居る。