今日は娘の誕生日である。
あの日も日曜日で、今日の様に良く晴れた朝だった。
渾身の力を振り絞った後の疲れた身体を安堵感と喜びに浸りながらうつらうつらしていると、病院の近くの小学校では運動会をやっているらしく、ピストルの音と子供達の歓声が聞こえていた。
最高に嬉しかった。
切迫流産で二度もあわやと思う危機が有って諦めかけた時も有ったので、無事に産まれたのは奇跡としか思えなかった。
夫はあたふたと知らせを聞いてやって来た。
珍しく花束を抱えている。
なんと黄色の菊の花だ〜。
薔薇とかコスモスとか売ってなかったのかなあ。
娘に逢う前に髭を剃ると鏡に向かって髭を剃り出した。
髭も剃らずに飛んで来たのだ。
この日から娘と私の蜜月が始まる。
夫が遅く帰宅しても淋しいと思わなくなったし、居ても育児を手伝える男じゃないから一人での育児は大変だったけど可愛いいから苦にはならなかった。
日に日に娘が成長するのを楽しんで過ごせた。
今程育児書が売っている訳で無く情報は殆ど無かったが、すぐ上の姉が二ヶ月前に二人目の女の子を産んだので常に教えてもらっていたし、独身の頃既に結婚していた姉たちのお産の後の手伝いにしばしば行って赤ん坊を扱う経験をしたのも良かったと思う。
少し成長すると可愛い洋服を縫って着せる楽しみも出来たり、一緒に歌を歌ったりした。
娘は歩くのより話すのより先に歌を上手に歌い出したのには驚いた。
あの日私はまだ23才、出産の経験はこれきりだけど懐かしい楽しい思いでなのである。