a-dollのブログ

忘れたくない日々のあれこれの記録

女殺し油の地獄

夫と一緒に松竹座夜の部を観て来た。
女殺油地獄』は良かった。本来は海老蔵が初役で『河内屋与兵衛』を演じる筈だったが、風呂場で転んで怪我をしたとかで休演になり、片岡仁左衛門が代役だった。私としては海老蔵に悪いけれど、仁左衛門の与兵衛が観られてラッキーだった。
代役で大きな役が増えて仁左衛門の体力が心配だが、私の心配を他所に、鬼気迫る殺しの場面をみせてくれて堪能した。
与兵衛はなさぬ仲の義父と母に甘やかされて我がまま一杯に育った。その結果遊女に入れあげ借金がかさみ、金の工面を向いの油やのお吉(仁左衛門の子息片岡孝太郎)に頼むが、断られ揚げ句に殺してしまう。
殺しの場面の立ち回りが凄い。灯りも消えてしまった中を油が流れる。油で滑りながら逃げ回るお吉。きらりと不気味に光る刀を手に追いかける与兵衛。こけつまろびつの立ち回りだ。
仁左衛門は動きも美しいが、顔が、目が良い。追いつめられた青年の心の動きを目で全て表現する。
もう一つの出し物『身替座禅』では目尻を下げた女好きの大名役が何とも色っぽくて、こちらの仁左衛門も私は好きなのである。
久しぶりの歌舞伎見物で大いに満足した夜だった。