お天気で暖かい。
今日も掃除をする。主にカラス磨きをした。目が悪いから汚れが見えないのを良いことにサボりにサボってきたが、拭くと雑巾が真っ黒になるからかなり汚れているのである。
ガラス磨きは良い運動になる。ガラス越しの太陽が暖かい。
今日は29日。子どもの頃お餅つきの日だった。前日に餅米を洗ってつけておく。これは子どもも手伝わされて手が千切れるように冷たかった。
台所の土間に臼を置いて、近所のJちゃん夫婦が朝早くからきてついてくれた。かまどで次々蒸されたお米をどさっと臼に空ける。
Jちゃんの奥さんが冷たい水に手を濡らし熱いお米をひっくり返す。それをJちゃん杵でつく。杵を振り上げている間にお米をひっくり返す。夫婦の呼吸はぴったりで、杵でおばさんの手を突いたりしない。感心してみている間に、熱々のお餅が出来上がるのだ。
茶の間で座って待っていた私たち姉妹は母がちぎってくれるのを良い形に丸く形作って餅箱に並べる。
しわくちゃの手で丸めているお祖母ちゃんも居た。和歌山生まれの彼女はお餅のことを「あも」と言ったが、ええ格好のお餅にする丸め方を伝授してくれた。
1臼全部を使って鏡餅も作る。
この鏡餅はお正月の間、橙を乗せて床の間に飾っておいたが、お正月が終わって食べる頃はカチカチで裏返すと黴が生えていて、こそげ落とすのも一仕事だった。
黒豆や青海苔や干しえびやゴマ入りの伸し餅。切り餅にして焼いて食べるが、薄く切って干しておかきに、お雛様用のあられも出来た。
そして最後には小豆の餡子を入れて丸めた。
これは母と兄の大好物だった。火鉢で焼いて美味しそうに食べてたのを思い出す。
わたしは子どもの頃、胃が弱くて甘い餡子は嫌いだった。丈夫になった今あのお餅を食べてみたいなと思う。
食糧不足の時代に、お正月だけはどのようにして餅米を調達したのか、縁側にいっぱい並べた餅箱に入ったお餅。家族皆が幸せを噛み締めた日だった。70年近く昔の思い出の中のお餅。