立秋と言うのに何だ、この蒸し暑さは。
朝刊が休みの日は午前中の時間がたっぷりある。
丁寧に掃除をした。
このどこにも行けない暑くて暇な時はしょうがない、冷房の効いた部屋でパソコンに向かう。
私の好きな映画百選 no.24「禁じられた遊び」
戦争によって故郷を後にして逃げなければならない人たち。
今もウクライナやその他のところで起こっている事実だ。
また戦災孤児になることの哀れな話も後を絶たない。
この映画は辛すぎてもう一度観ようと思わなかった映画である。
今日は逃げないで観た。
上映時間は短い。
1952年製作 フランス映画 監督 ルネ・クレマン
今回久しぶりに観て思ったのは、全体に登場人物が明るいのだ。
その中に幼女の悲しみが凝縮されている。
1940年、空襲を受けているパリから逃れてきた人々で道は混雑していた。
家財道具を積んだ荷車や自動車。
ドイツ軍の機銃掃射が始まって橋の上にいた多くの人が死亡した。
幼いポーレット(ブリジット・フォッセー)は両親と乗用車でパリから逃げて来たが、両親は爆撃に遭って死んでしまう。
一緒に連れて来た犬も死んでしまった。
一人で彷徨っていたポーレットは農家の8歳の少年ミッシェル(ジョルジュ・プージェリー)に出会う。
ミッシェルは着ている服はボロいがベレー帽を被っている。
さすがフランスの男の子だ~
ミシェルは5人兄弟で、お兄ちゃんは馬に胸を蹴られて死んでしまう。
医者にも見せず、せめて薬を・・・と下剤を飲ますという無知さ、呑気さ。
昔の人はこんな感じで早死にしたんだ。
貧しいけれど優しく暖かい家族は親を亡くしたポーレットを受け入れた。
ポーレットは5歳、可愛いドレスを着ていて良い香りがしている。
今回発見したけど、ポーレットの着ている洋服は、死んだ母親とお揃いの布地で出来ている。
母親が仕立てたのだろうか。
それに引き換え、ミッシェルの家族はボロに近い服を着ている。
ミッシェルとポーレットは水車小屋で穴を掘って死んだ犬を埋めた。
ミッシェルは犬のお墓に細い棒で作った十字架を立てた。
幼すぎて十字架もお祈りの言葉も知らないポーレット。
ポーレットは十字架が気に入って、ネズミやひよこやゴキブリまで埋めてお墓を作って十字架を立てようとした。
彼女の欲望はエスカレートしてくる。
ミシェルは教会の祭壇や、霊柩車の飾りや最後には墓地から盗んでやった。
親にばれて叱られるミッシェル。
そんなある日、警察が来てポーレットは保護されて連れて行かれた。
ごった返した駅でシスターに名札をつけてもらうポーレット。
多分孤児院に連れて行かれるのだろう。
どこかで「ミシェル~」と呼ぶ声が聞こえた。
映画の冒頭で、ポーレットは両親の遺体にとりすがって泣くわけでもなく、母親の頬と自分の頬の温もりの差を確認して死を確かめて瀕死の犬を抱いてその場を離れる。
以後、最期を除いて母親を思い出して泣く場面はない。
心の中に封印してしまったのか。
キラキラした十字架に執着する心の中は何だったのだろう。
農村の長閑な風景や家族の営みと戦争の傷を負って逃げ込んできた都会の幼女の物語。
ナルシソ・イエペスのギター曲「愛のロマンス」が流れる。