a-dollのブログ

忘れたくない日々のあれこれの記録

白浜の思い出

美容院に行った。
髪を触ってくれている子とおしゃべりを楽しむ。彼女は郷里が和歌山の白浜だという。「泳いで来たん?」と聞いたら「最近はもう海に近づく気が余りせえへんわ」と言ってる。それは勿体ないじゃないか。あんな美しい海なのに。
1948年、私は6年生。夏休みに父に白浜へ連れてもらった。
3姉妹と父とで白浜に向う電車の中、何とすりに会って父は財布を無くしてしまったのだ。
今の様にカードが有る訳無く、全て現金で支払わねばならない。引き返そうと父は思ったのだが、被害届を出した駅長室で私は「行きたかったのに」と言って大泣きしたらしい(そのときH子姉ちゃんや、妹のSちゃんは泣かなかったのだろうか)。兎に角私が泣いたので父は白浜行きを続行することにした。
予約してあった旅館に着いて、父はお得意先に電話をして事情を言ってお金を貸してもらうことになった。
終戦後父の事業は大層儲かっていて、泊まった旅館は大きな立派な建物だった。
お料理も豪華、それまで長く食料難で豆ご飯やお芋ばっかりを嫌々食べてた子供達が、本格的な大ご馳走を前にしてよろこんだこと。
美しいお皿に氷を入れた上にガラスの簀を置いた『魚の洗い』というのも始めて食べた。
あの頃は、ご馳走をお腹いっぱい食べられることほど、子供達を幸せな気分にさせるものは無かったのだ。
次の日は、まだ海水浴をする人も少ない美しい浜辺で思い切り泳いで遊んだのだった。
父は多忙な日々をやりくりして私達を充分楽しませてくれたのだ。
この話には後日談が有る。続きは明日。