a-dollのブログ

忘れたくない日々のあれこれの記録

最終回

「ぎんさま」最終回。
可愛い孫は幼稚園の3年保育に入った。
お祖母さまは、毎日幼稚園の送り迎えに余念がなかった。幼稚園の先生方への付け届けは抜かり無く、可愛い孫は幼稚園で先生方にも溺愛された。
それが証拠に、幼稚園の同窓会というのが20年程前に開催されて、夫は出席した。高齢の園長先生に50年振り位でお目にかかったら「けんちゃんね」と覚えていらっしゃったと云うから驚く。
母親の全うなしつけではなく、祖母や使用人や他人にまで甘やかされて大きくなると、夫の様に大人になっても子供の様で、人には楽しい性格だと喜ばれても、家族としては大変な思いをしなくてならなかったのである。
やがて、日本は恐ろしい事態になり始めた。
年を取ってからの転宅が身体に応えたのか「ぎんさま」は次第に弱って病気になった。家で長く養生した後、昭和16年7月その生涯を閉じた。
その後間もなく日本は無謀な戦争を始めるのだが、「ぎんさま」は恐ろしい目に遭わず逝ってしまったのだ。享年79才(ちょっと自信が無い)。
当時家には看護婦さんとお手伝いさんとが住み込みで働いていた。充分な介護を受けて亡くなられた様で、最後まで思う様に生き抜いた幸せな人だと思う。
夫からお祖母さまの悪口は聞いた事がない。夫にとっては最後まで優しいお祖母さまだったようだ。
今も掛け軸を替える度、おひな様を飾る度、立派な字だなあと眺めつつ、私は逢えなかった夫の祖母の事を偲んでいる。
「ぎんさま」の話は今日で終わりで、明日からは「ひでさま」物語が始まる。乞うご期待。