a-dollのブログ

忘れたくない日々のあれこれの記録

「蜜蜂」

セミフ・カプランオール監督脚本 2010年トルコ映画。ベルリン国際映画祭金熊賞他、幾つもの賞をとった。
森の中から始まる。小鳥のさえずり、川のせせらぎの音、木の葉のざわめき。静寂がある。
そこへゆったりしたテンポでろばの背に荷をくくり付けた男がやって来る。ロープを木の枝に投げてそのロープを伝って木に登り蜜蜂の巣を取り付けようとする。
6才のユスフは両親と深い森の中で暮らしている。
お父さんは養蜂家である。お母さんはもっと確かな警察官にでもなって欲しいと望んでいるようなのである。
幼いユセフはお父さんが大好き。森の中でお父さんと過ごすのも大好きであった。
お母さんが「飲みなさい」という嫌いなミルクを内緒で飲んでくれる。
ある朝、ユスフがお父さんに夢の話をすると「人に聞かれないように小さな声でしゃべりなさい」という。
お父さんの耳元で囁くユセフ。「誰にも言わないように」とお父さん。
内容は解らない。
小学校で、本を上手に読めたらご褒美に赤いリボンを貰える。ある日ユセフは読もうとしたが吃って笑われた。赤いリボンはお預けになった。
森の中では蜂蜜が採れなくなったので、お父さんは森の奥深く入って行ったまま帰らなくなった。
その日からユセフの口から声が出なくなった。
この映画では音楽がない。静かにゆったりとしたテンポで流れて行く。映像はどの場面も幻想的である。
ユセフが愛らしい。ゆっくり表情を捉える映像だけで胸にじわっとユセフの悲しみが伝わって来る。
遥か高い木の上で作業をしているお父さんを手伝うヨセフが見上げるつぶらな瞳。
ろばの荷の上でちょこんと座って揺れているすがた。
教室の丸いガラスの入れ物の中に入っている赤いリボンを眺めている顔。
どの場面も愛らしく切なく素晴らしい。「卵」「ミルク」「蜂蜜」 [DVD]