無花果がようやく食べごろに近づいて来た ^_^
何も食べるものが無くなってしまった戦後。
昭和16年に、疎開を兼ねて父は200坪の土地に家を建てた。
その時に広い裏庭に無花果の木を数本植えたのだ。
戦後、その木が大きく育って実をつけだした。
おやつが何も無くてひもじかった子供達には甘くておいしい果物だった。
その頃、唇の端に「あくち(口角炎)」ができた。
誰かが「無花果の食べ過ぎや〜」と詰ったが、食べ過ぎという前に、他に食べるものが不足していたからしょうがない。
配給のわずかなお米だけでは、育ち盛りの子供たちをお腹いっぱいに食べさせるのは困難だっただろう。
私はこの家を建ててすぐに無花果の苗木を植えた。
夏が近づくと葉が茂り、その枝に小さな小さな実をつける。
暑い盛りが峠を越すと、その実が少しづつ大きくなって赤みを帯びてくる。
ある日熟してパカっと割れる。
その時が一番甘い。
亡夫は無花果が嫌いだった。
娘も食べない。
私一人でこの美味な果実を毎朝食べられる幸せ。
だから夏の終わりが待ち遠しいのである。