よりにもよって、私のベッドの掛け布団の上にクルミは毛玉を吐いた。
仕方なくカバーをはがして付け替える。
IKEAで買った簡単にかけられるカバーだけど、今の私には結構重労働になってきた。
私が結婚した頃(60年前)は今使っている袋状に縫った布団カバーは無かった。
大きい木綿の布を広げて包んで四方から畳んで縫い付けた。
布は洗ったら糊付けしておく。
顔が当たるところは襟カバーを別に縫い付けた。これは時々外して洗う。
今から思えば大仕事である。
再々掛け替えるものでは無かった。
大仕事といえば、布団は時々解いて作り直した。
布団屋さんに頼んだら簡単だったのだろうけど、母は家で作った。
幼い頃から母を手伝って手順を覚えたのだった。
解いた布団の皮は洗う。洗って再利用をする。
時には古い着物を解いて縫って作ったりした。
綿は布団屋さんに打ち直しを頼んだ。
硬くなった綿はフカフカになって茶色の紙に包んで届く。
少し新しいのを買い足して綿入れの作業をした。
綿入れの作業は大変なのである。
綿が舞うので髪の毛はスカーフで包んだ。
素足で綿の上を歩いて広げる。
縦横に広げて重ねる。
布団の皮より大きめに広げる。
ひっくり返して中にきっちり納めるのはかなりのコツが要った。
そのあと長い綴じ針に綴じ糸を通して所々閉じつける。
四隅は総にする。
結婚してもしばらくは一人で奮闘して布団作りをしたのだった。
実はこの作業は嫌いでは無かった。フカフカに出来上がったお布団は寝心地がとても良かったし。
木綿綿は何度か打ち直して使えた。
古くなって再生が効かなくなったら最後は座布団になった。
物が不足していたから、工夫をして手に入れる時代だった。
今は何でも簡単に買えるけれどその分お金も要るから大変なのだと思う。
つづく