a-dollのブログ

忘れたくない日々のあれこれの記録

こけらおとし

上六に新歌舞伎座が出来た。
柿葺落公演、昼のプログラムを観に行く。新しく建設されたYUFURAと言う名のビルの6階にある。前の新歌舞伎座よりずっと小振りである。
6階という高さへ、エレベーターとエスカレーターで、お年寄りの観客の多いこの手の劇場への出入りは少し辛いものがある。お手洗いも小さい様に思う。新しいシステムに慣れるまで、観客はおたおたしていて、休憩時間は凄い行列が出来ていた。座席は奥行きに余裕があってこれは良い。
新しい劇場の批評はこれ位にとどめて・・。
柿葺落興行は、「二十一世紀歌舞伎組」の公演。
1、太閤三番叟。始めて観た。大阪らしいおめでたい三番叟である。
2、口上。砕けた感じで若い役者の意気が感じられ好感が持てた。
3、連獅子。市川猿弥の親獅子、市川弘太郎の子獅子。
 子獅子の出来が抜群に良かった。幼い子らしい愛らしさに加え、元気さ、弾む毬のようで感動した。
連獅子には思い出がある。高校の3年生の文化祭で、余り気の合わないM田さんと連獅子を踊ったのだ。私は子獅子の方を踊った。2人で踊ることになって、急遽M田さんのおっしょさんの所で稽古をつけてもらって(近いM田さんのおっしょさんの所で習ったので、流儀が違うし、私には踊り難かった)、練習不足だったし、私としては不満な舞台だった。
ちょっと苦い思い出なのだが、今日一緒に行った高校の友達のうち、2人は「へえ、そんなんやったん」と記憶に無いどころか、その時はエスケープをして映画を観に行ったというのだ。Yさんだけが「あんたが、踊り難いねん、とこぼしていたのを覚えてる」と覚えていてくれた。55年も昔の話である。
私のあの時の踊りに較べ、今日の舞台は何と言う素晴らしい子獅子であったことか。
4、吉野山(道行き初音の旅路)、今日の出し物は全て所作事で、華やかで屈託の無いファンタジーばかり。
桜の満開の中での、静御前佐藤忠信の話。忠信は実は狐が化けていて、静の持つ狐の皮を張った鼓を慕うという筋。
市川右近が忠信を熱演した。
長唄や清元や竹本という日本の伝統の音楽を聴くのも素晴らしい。若者が巧みに三味線を弾く姿を観たり、独特の間というものを持つ日本音楽を生で聴くのも、中々良いものである。
彼らは梨園の御曹司では無いけれど、市川猿之助の藝と観客を楽しませる心を受け継いだ「二十一世紀歌舞伎組」にはこれからも頑張ってもらいたいと思う。

緞帳も素晴らしい。上村淳之作花鳥図。