a-dollのブログ

忘れたくない日々のあれこれの記録

ルーシー・M・ボストンのファンタジー

1892年生まれの作者は、英国で一番古い住居と言われるマナーハウスに住んでいた。1220年建造のノルマン様式の石の家に住んで96才で亡くなった。
60才から児童書を書き始めた。またパッチワーククィルトを始めたのもこの頃。
私の好きな「グリーン・ノウ」シリーズ。すべて舞台がこの石の家で、ウズラのような、と言われる腰の曲がったしわくちゃのオールド・ノウ老婦人は彼女がモデルである。
「グリーン・ノウの子どもたち」
グリーン・ノウの子どもたち (グリーン・ノウ物語 1)
7才のトーリーは、継母と父はビルマに居るので、冬休みを寄宿舎を出て、大ばあちゃん(お母さんのお祖母ちゃん)オールド・ノウ夫人とお城のような古い家で過ごすことになった。
居間の大きな暖炉の上の壁には、300年昔の油絵が飾られていた。描かれているのは3人の子供とその母親。
初めて出会ったのにすぐ打ち解けた大ばあちゃんは、トーリーを螺旋階段を上がって屋根裏の子供部屋に案内してくれた。
そこには古い木馬や鍵の掛かった木の箱、ドールハウスなどがあって、小さな木のベッドには古いパッチワークのキルトが掛かっていた。         
ドールハウスにはベッドが4つあって、大ばあちゃんは「他の子供が時々来るのよ」と言った。
その日からトーリーはトピアリーのある庭やオールドローズが咲いている庭や森や川でのびのびと過ごすのだった。
「グリン・ノウの煙突」
グリーン・ノウの煙突  (グリーン・ノウ物語 2)
待ちに待った復活祭の休みに、トーリーは大ばあちゃんの家にやって来た。
暖炉の上の油絵は無くなっていた。大ばあちゃんはお金がなく、家の修理が出来ないので絵を売ろうとしていた。
だから、300年前の子どもはもう居ないのだった。
代わりの絵は、4頭の白い馬に引かれた馬車に貴婦人が乗ってた。150年昔のオールド・ノウ夫人で、その日に夫人の宝石が全部無くなってしまったという。
「グリン・ノウの川」
グリーン・ノウの川 (グリーン・ノウ物語 3)
ある夏、オールドノウ夫人は家を貸した。借りたのはビギン博士とミス・シビラの二人の女性。
二人は3人の子どもたちを預かることにした。
難民のピン、オスカー、姪の子アイダ。屋敷の周りは水が溢れているので、水泳の出来る子という条件だった。
3人が過ごす川遊びの不思議なわくわくする体験。
「グリン・ノウのお客様」
グリーン・ノウ物語〈4〉グリーン・ノウのお客さま (児童図書館・文学の部屋)
コンゴのジャングルでのびのびと家族と暮らしていたゴリラのアルノーは、捕らえられてロンドンの動物園のコンクリートの檻の中にいた。自由が得たくて、他の動物たちのようにあきらめて達観して暮らすのは嫌だった。難民のピンは遠足で動物園に来てアルノーに出会う。
どれも夢にあふれ楽しい物語で引き込まれる。
挿絵が長男のピーター・ボストンで、これがまた素晴らしい。
作者は、弱いもの、障害者、黒人、難民、巨人、動物、小鳥、全てに優しい目を向けている。
また、底に流れるのは聖書。川の洪水でカヌーに乗って助かった3人は「セム、ハム、ヤペテ」と呼ばれたり、大きな石の屋敷はまるでノアの箱船のよう。
もう少し元気があったら、ヘミングフォード・グレイのマナーハウスに行きたいなあ。