コミノネズミモチ(小実鼠黐)
集会所へ行く途中の公園で、良い香りがした。
昨日、近所に住むKさんをNさんと一緒に訪問した。
先週100歳の誕生日を迎えたばかり。
お部屋には、誕生日に牧師先生が訪問された時に持って来られた教会員の寄せ書きの色紙や、花籠、市長さんから届いたお祝いの言葉の額、カードや色々な品が賑わっていた。
Kさんはとっくに先立たれたご主人と一緒に暮らした住居で、一人で暮らし続けている。
長男さんは岡山に住んでいて「お母さん一緒に暮らして~」と何度も懇願されたけれど「いや」と断って、ずっとそのまま一人暮らしを続けて来た。
たまに私たちが訪問した際、ご長男は良く滞在されているので、お母さんのことが本当に心配なのだろう。
彼ももう80代になろうとしている。
Kさんは20歳そこそこで子供を産んだのだった。
岡山から妻と犬を乗せてドライブするのもしんどいことと思うけれど。
Nさんは頑固に一人住まいを続けて来た。
そんな中で100歳を迎えたKさんは、コロナの間にめっきり弱ってしまった。
毎日ヘルパーさんが来てお世話をしている。
週に2度はお風呂に入りにデイサービスに行く。
もうチャイムが鳴っても玄関へ出ることは出来なくなったから、ヘルパーさんが来る5時以降に訪問してほしい、と息子さんに言われていた。
Kさんは大勢で群れるのが嫌い。
教会でも「ランチ一緒にしよう」と誘っても「家で準備をしてるから」とさっさと帰ってしまう。
友人はごく僅か。
仲良くしていたのは、亡くなった私の夫とNさんぐらい。
一人が良いのだ。
元気な間は一人で静かに油絵を描く日課だった。
老人施設で暮らしたくない。
家でひとりぼっちでも寂しくないという。
家事をする能力が無くなっても、行き届いた介護制度を利用して最後まで自由に過ごせる。
穏やかに笑って暮らしていられる。
「また来月も会いに来るよ」と手を握ったら、
「はい」と笑顔で、柔らかい手で握り返してくれた。