クリニックの前の桜草
暖かい雨の日。
医者に薬を処方して貰いに行っただけで、暇。
母に貰ったもの
母は晩年、豊かに暮らしていた。
贅沢をしない女性だったからお金が残る。
そこでそれを自分の娘たち分け与えた。
姉妹5人に平等に。
ある時、留袖を誂えてくれた。
嫁入り道具として留袖を持たせてくれたけれど、何年も経って少し派手になってくる。
今は結婚式や披露宴をしないカップルが多いが、以前は必ず親族を招いて披露宴をしたものだった。
私には甥や姪が大勢いて、それぞれの結婚式に出席した。
又、仲人を頼まれると言うのも有った。
その時に必ず着る黒い留袖。
今の様にレンタルは余り普及してなかったし。
母は5人に新しい留袖を誂えたのだった!!
中に「着物はいらん」という姉が居たが、それは現金を貰った様だった。
私の古い方の留袖は縫い直して、娘が結婚する時に持たせた。
もう一つある。
全員に小さな小さなダイヤモンドが5個一列に並んだ指輪を買ってくれた。
それは40年以上前に流行ったもので、欲しくても自分では買えない。
母は5人全員に同じものを買った。
現金だとすぐ使ってしまうからと。
母はそれから随分経って、父より先に亡くなったが、その時も自筆の遺言書を残していた。
全員平等に行き渡る様に、正しく書いてあった。
兄妹が争うことが無いように母は書き残したのだった。
母は幼い頃貧しくて苦労をしたが、晩年豊かに過ごしたので、父から渡されたお金を大切に使い蓄え、それを皆に分け与えた。
その何度も着た留袖も、指輪も、出番はもう無くなったが、まだ私の手元にある。
すでに長姉と兄は亡くなったけれど、残り姉妹は仲良く親族共々良い関係を保っている。
私は母の深い愛と賢さを忘れていない。