a-dollのブログ

忘れたくない日々のあれこれの記録

徴用逃れ

毎日お昼ご飯の時に観ているドラマ「やすらぎの郷〜道」。

人生ついてない男、公平(橋爪功)の過去の物語が展開している。

1943年(昭和18年)、公平(風間俊介)は徴兵制度が1年若い人まで及ぶと聞いて、ある決心をして徴用を逃れようとしている。

彼の従兄弟は徴兵を嫌って山に逃げて行方知れず、兄一人は海軍ですでに戦死、もう一人の兄は自死した。

家族は自死を隠して事故として届けて荼毘にふして始末をつけた。

見つかったら家族全員が罪に問われる。

残酷な太平洋戦争末期の物語が進んでいて私は目を離せない。

 

所で私の兄はドラマの主人公と同世代だった。

兄17歳、旧制中学校を卒業しようとしていた。

戦争は末期状態で、学徒動員や徴兵年齢が引き下げられて、兄もいつ戦争に持って行かれて死んでしまうかも知れない。

父は必死で逃れる術を画策した。

大切な一人息子なのである。

 

私は当時小学校の2年生でぼんやりした記憶しかないけれど、

お兄ちゃんは田舎の小学校の先生(代用教員)になった・・・。

それからまた、大阪大学の応用化学の研究室にいた叔父さんに頼んで、助手として臨時雇いで通って試験管を洗ったりしている・・・。

全て幼い頭に記録されたことで不確か。

 

家にある家族写真は、灯火管制の中、真っ暗にした座敷で家族全員一張羅を着て写っている。

両親の顔は引きつっている。

1945年春の写真である。

多分、徴用逃れも万策尽きて・・・と覚悟を決めて最後に撮ったのだと思う。

多分兄自身は軍人に成りたかっただろう。

当時の男の子だから「お国のために役に立ちたい」と思っていたかも知れない。

結局兄は徴兵の赤紙が来ない間に、日本は負けて終戦の日を迎えたのだ。

8月15日、玉音放送を聞いた後の父の晴れやかな顔を忘れない。

「日本は負けました。戦争は終わったよ」と言ってくれた。

兄はわずかな差で幸運にも戦争に行かず89歳まで長生きした。

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